2011年10月09日

ジェネラリスト と スペシャリスト

単なる思い込みかもしれないが、震災以後はメディアの医療についての取り上げ方が変わってきた気もする。そのひとつは「家庭医療」というキーワード。震災はくしくもその前にようやく「プライマリ・ケア学会」「家庭医療学会」「総合診療学会」といういわば臓器横断系?3学会が合併した矢先の出来事であった。現在も合併したプライマリ・ケア連合学会によりPCATという活動が継続されている。家庭医療のキーワードは「私はあなたという一人の人間全体の専門医です」ということ。臓器専門医にとってこのキーワードには共感しにくいと思われる。大学卒業後大学消化器内科にストレート入局し研修した私にもその感覚は理解できる。「ひとつの臓器のマネージメントすら大変なのに、幅広い全体のマネージメントなんてできるわけがない」という感覚である。ある意味正しいかもしれない。しかし、その感覚に少しの違和感を感じ続けてきた自分もいる。それは・・・卒後4年目に突然腎臓内科医に転向したからか?・・・透析患者さんとのおつきあいで全身をみることの重要さを実感したからか?・・・腎臓内科医として院内全科からのコンサルテーションを受け院内くまなく走り回る生活を経験したからか?。。。いずれもしっくりこない。
まあ、よくわからないのが本音ではある。でもふと思い出した。 高校まで吹奏楽部だった自分が大学で何を思ったか「探検部」に入部した。そこでは「探検」というキーワードにあうなら、山にも登るし、川にも入るし、洞窟にももぐる。当然他の部活動からは「あいつらいろんなことやるけどひとつでも大変なのに、あんなのでいいのか?」という目で見られた。言葉で反論することはいろいろできたけど、それよりも結果的に、文化系サークルでありながら昼休みには体育館でトレーニング、遠征前の合宿をわざわざ学内で行い、体力トレーニングをする・・・、そんな姿勢を見せることで、無意識に説得させようとしたのかもしれない。幸い今でもそのサークルが残っているのが正直うれしい。そのさいよく議論したのが「GeneralistとSpecialist」。「われわれ探検部員はGeneralistとして、「そうとう広く」「そうとう深く」という活動は可能だ。Specialistといってしまば、むちゃくちゃ深く、はできるかもしれないが、「広く」はできない。それが探検部としてのアイデンティティだ、でもそのためには私自身もそうとうがんばらないといけない」と。これってそのまま 今の家庭医のあるべき姿につながる気がする。学生のときから無意識にそんなことを議論していたことが、いったんスペシャリストを経験しながらもいまは、ジェネラリストのほうが居心地よく感じることに通じるのかもしれない。
でもここにまた自己矛盾がある。自分自身はすでに開業医しかも医院開設者としての責任がある。いまさら現プライマリケア連合学会の要求する研修を受け、試験を受け、家庭医認定を受けることはできない(医院を辞めない限り)。というわけで、私は現制度上の「家庭医」にはなれない。それが今、「家庭医もどき」と名乗っている理由でもある。・・・でも、そうだ・・・・学生時代と同じだなんだ、言葉で説得し理解もとめるよりも仕事ぶりを見てもらうことで、身近な人たちが納得してくれるならそれでいいではないか!。その思いがあると、かえって今からでもいろんな勉強ができるし、同じ志を持つ、それはジェネラリストに限らないのだけれど、すばらしい医師仲間と交流することで少しずつではあるが、自分を少しずつでも成長させること、・・そのような日々の努力が「資格」よりも大切なんだろう、と思い始めているこのごろである。

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Posted by てっちゃん at 22:10│Comments(2)医療
この記事へのコメント
はじめまして!

その通りだと思います。
資格に縛られるより、
現状で学べることを学び、出来ることをする、事の方が
よほど求められ、信頼を得られる事だと思います。
(きっと今までの信頼されるお医者さんも、そうしていたんだと思います)

「すばらしい医師仲間と交流することで少しずつではあるが、自分を少しずつでも成長させること、」
   ↑
一番安心する言葉ですね。
Posted by 0-た0-た at 2011年10月10日 11:15
コメントありがとうございます!。
「医師仲間」と書きましたが、医師以外のすべての医療従事者、さらにはまったくの異業種交流でも同じように感じることはよくあります。
結局人間の生産的な行動すべてに共通する原則なのでしょうかね・・。
Posted by てっちゃんてっちゃん at 2011年10月10日 22:11
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    コメント(2)