2011年11月07日

内科学会四国地方会「教育セミナー」報告?!?

昨日の内科学会地方会「内科専門医による教育セミナー」に参加した。今回は担当病院のPBL形式での定期カンファをそのまま再現するセッションで、勉強になった。全員がまず白衣を着て登場!(^^)、指導医は司会者のみで、プレゼン、ディスカッション、ホワイトボード板書などはすべて現役研修医。あたかもNHKの「ドクターG」のごとく進行して行く。僕としてはこの患者さんをこの病院に紹介する立場と、紹介される病院勤務医の立場での思考回路の違いに思いをはせながら?擬似追体験をしながら勉強させていただいた。

主訴の提示ではいかにも肺塞栓血栓症の典型的言葉がならぶ。しかしながらこの方には認知症があり、しかも施設入所者である。すなわち、提示された主訴は患者自身の訴えではない、ということになる。肺塞栓らしく?倒れる現場を施設スタッフが直接見たわけではない。さらには、気管支喘息があるが認知症のため十分な吸入を自分でできていないことも判明・・・「ホントに肺塞栓だろうか・・・・」「喘息の発作ならその場での対応でも何とかなるかもしれない・・・」

実際にこの施設の嘱託医として対応したと仮定した場合、大変悩ましい・・・しかしながら、
「肺塞栓血栓症であったら大変」と判断し、救急搬送紹介入院をお願いする、選択をしただろう、と感じた。

そして、病院医師にバトンタッチ。
救急センター到着、バイタル、身体所見、検査所見などをふまえた考察が随時ディスカッションをはさみながら進行してゆく。意外と?酸素吸入だけで比較的安定してきた。Well's criteriaを適応したり、FDP-Dダイマーなど検査結果からは肺塞栓の事前確率は決して高くない印象だ・・・。主訴からは肺塞栓血栓症の可能性が高い。でも 気管支喘息発作など 同列に重視したほうがよい病態も浮かび上がってくる。結果、造影剤を使用する検査に入る前に まずは喘息管理だ、ということで幸い酸素吸入や喘息に対する処置で落ち着き、診断治療には時間的余裕ができた。
改めて 造影CTを施行し 血栓塞栓も確認、こちらの治療も行い両者とも改善し無事退院。

ざっというとこんな感じであった。

結果としては ショックに陥らない(おそらく比較的慢性経過の)肺塞栓+気管支喘息発作 が共存していたわけであるが、ここで自分なりに 学んだこと。

いわゆる「主訴」が患者さん本人の言葉ではない場合 その「翻訳の仕方」によって初期対応が間違ってしまうかもしれない(今回の場合はたぶんそんなことはないけど、もっと切迫感がない疾患の場合にはありうるかも・・・)。後方病院での対応として大事なことは、 「肺塞栓らしい」という触れ込み ? をそのまま信用する?のではなく、 きちんと病歴を確認し、生活背景も把握し、バイタルサインを含めた基本的な診察をきちんと行い、その上で論理的に推論を進める。 この作業 をきちんと行うことは 「あいまいな臨床」への不安感を少なくし、ある程度自信を持ち方向性を持って対応するために必須であること。
このような後方病院の姿勢は、紹介する立場からしても その後の推論の経緯がきちんとフィードバックされれば勉強になるし、お互いの臨床レベルも上達してゆくであろうこと。

大学卒業後 勤務医(研修医時代含め)12年間+開業医になってもまた12年がもうすぐすぎようとしている今年は特に 両方の立場を 改めて考えさせられるなあ・・・。診断治療の中身よりも、そのようなことを考えながら 臨床における推論の多様性を実感した一日であった。

いよいよ来年度からは 開業医としての生活のほうが長くなってゆく。これまで以上に軽装備での診療、患者さんの生活背景・環境を意識した診療をしなくてはならなくなってゆく。
その節目?の今回、いい勉強をさせていただいた。

これまで、病院への「診療情報提供書」には極力、自分の思考過程と考えられる診断 を間違っててもいい!という気持ちであえて 明記して 紹介していた。活字に残ってしまうのはある意味、間違ってたら恥ずかしいことではあるが、紹介後の経過を後日フィードバックいただくことで、自分の弱いところ、を再確認し学習してきたつもりだ。今後もさらにその姿勢を続けてゆきたい、と思った。本当は このような病院でのカンファに直接参加してみたいなあ、と思った。今回のプレゼンターとなった病院は近い場所にあり、日常的にいろんな患者さんをお願いしている。月曜日8時からのカンファであるがこの時間自分もすでに仕事に入っているので、参加できないのが残念・・。7時開始なら何とか参加できるのだが・・(^^)。いずれにしても、いろんな機会を捉え、勉強のきっかけにすることが重要だと実感した。

ちなみに、
この病院の指導医は決して スーパードクターではない。大リーガー医でもない。
家庭医総合医としてのトレーニングを受けていない、内科専門医である。
もちろん今回のは実際にカンファでディスカッションしたものをシナリオを調整して
本当のカンファの時間30~40分にまとめなおしたものであり、演技が含まれているものの、概ね普段どおりだという。

僕は
これまで同種のカンファに いわゆる大リーガー医や 有名指導医 が講師のものには参加したことは何度となくあるが、一地方の普通の病院でのこの種のカンファを疑似体験できたことで、このような環境であっても、
負けず劣らず ハイレベルの ディスカッションができるのだ、と ある意味新鮮であった。

今の自分の立場でもセルフトレーニング代わりに 応用きくかもなあ、と思いながら帰途についた。
あ、午後からは、さらに 別に教育講演会 5単位 があったのですが、 すでに あまり聞く気がしなくなったので
帰宅しました(^^)

これからも お世話になります!。〇K〇高〇病院のみなさま、有益なセッションをありがとうございました!

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Posted by てっちゃん at 23:23│Comments(0)医療
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